不動産投資には、実物不動産に直接投資するアパート経営と金融商品であるリートへの投資があります。また、アパート経営は個人事業として行う場合と法人化して行う場合が考えられます。そこで、リートへの投資と法人化したアパート経営について、節税効果の違いなどをご紹介します。

リートの分配金は総合課税!税率はどうなっている?

まずリートに投資をした場合の利益に対する課税関係を確認します。リートへの投資においては売却益も発生しますが、主な収益は投資対象からの賃貸利益が原資となる分配金による利益です。個人がリートに投資をして分配金を受け取ると、配当所得として所得税が課税されます。

配当所得は、申告不要にしたり申告分離課税にしたりもできますが、原則は総合課税とされています。総合課税とは、給与所得や事業所得などのその他の総合課税対象の所得と合算して超過累進税率を適用して所得税額を確定する課税方式です。

税率は課税総所得金額が大きくなるほど高くなり、5%から45%となっています。そのため、リートの分配金が増加すると税負担も上昇します。所得税以外に10%の住民税、所得税に対して2.1%の復興特別所得税も課税されることになっています。

節税面ではかなわない?法人化したアパート経営の節税効果!

個人がリートに投資した場合の分配金に対する税率は、総合課税を選択した場合、所得税と住民税、復興特別所得税を合わせて最大約55%となります。申告分離課税を選択した場合は20.315%です。一方、法人化してアパート経営をした場合の利益に対しては法人税が課税され、法人税率は原則として20%を超える比例税率が適用されます。ただし、中小法人に該当する場合は15%とされています。

税率の単純比較をした場合、賃貸利益に対する税率は法人化した方が有利になるケースが多いです。ただし、一般的には、法人化すると税務関連処理が複雑になるため税理士への報酬が発生するなど管理コストが上昇するといわれています。さまざまな条件を考慮すると、小規模な不動産投資であれば個人事業で投資をし、大規模に投資を行う場合は法人化する方が節税効果が高いでしょう。

リートでできる節税は?株やFXと合わせた損益通算は可能?

リートに投資をして総合課税を選択した場合は、所得が増加すると税率があがってしまうという税務面でのデメリットがあります。しかし、申告分離課税を選択すると20.315%の比例税率となり、所得が大きい場合は総合課税より税負担を減らすことができます。

また、申告分離課税を選択した場合の配当所得は、株式の売却損との損益通算や上場株式等の前年以前3年以内の損失繰越控除によって節税できる場合もあります。

不動産投資だけでなく株式投資も行っていて売却損が発生する場合は、リートの配当所得について申告分離課税を選択すると節税につながるケースがあるということです。ただし、株式と同じような金融商品であっても、FX取引により発生した損失とは損益通算も損失の繰越控除も認められていない点を理解しておく必要があるでしょう。

リートの強みは分散投資!リスクヘッジに優れている!

賃貸事業の規模が大きくなったら法人化してアパート経営を行う方が税負担を軽くできる可能性が高いですが、実物資産への投資は、所有している物件に空室が発生したり災害による被害が発生したりすることで急に利益が減少するリスクがあります。

一方、リートへの投資をする場合は、投資対象物件の数が多く一部で損失が発生しても全体に与える影響が抑えられる分散投資効果が期待できます。事業形態の選択にあたっては、税以外にも考慮すべき点があるということです。不動産投資を行う場合は、法人形態か個人形態かによって税負担が変わってきますので、税以外の要素も考慮しつつ、どちらの形態を選択した方が有利になるかを試算した上で、有利になる形態を選択することをおすすめします。