賃貸アパート経営を始めた当初はリフォームについて考える機会は少ないかもしれませんが、長期的に賃貸アパート経営を続けていくためには適切なリフォームを行って賃貸物件の魅力を維持していくことも大切です。特に中古アパートの場合は、新築物件よりも早いタイミングでリフォームが必要になる可能性がありますので、事前に準備をしておくことが重要になります。そこで今回はリフォームについて目安となる金額や用意する方法、効果的なリフォーム内容などについてお伝えします。

☆アパート経営におけるリフォーム代の目安の金額は?

アパート経営を継続して行っていくためには、アパートの魅力を維持し高い入居率を確保し続ける必要があります。そのためには、必要なタイミングで一定規模のリフォームを行うことも大切です。リフォームは、経常的に行う修繕対応とは違い毎年のように行うものではなく、長期的な視野に立って適切な時期に決断するというタイプのものです。ある程度の規模のリフォームを行わないと物件の魅力を維持することは難しいので、工事資金の準備も重要です。一般的には、効果的なリフォーム工事代は最低賃料の3年分程度はかかると想定しておいた方がよいでしょう。1部屋月10万円賃料の場合は、約360万円程度がリフォームに必要な予算ということになります。

☆リフォームは費用対効果を考えて行う必要がある

個人住宅のリフォームであれば、その家で生活する人の満足度が上がることを基準にしてどんなリフォームをするかを決めることになるのが一般的です。一方、賃貸アパートのリフォームは、個人住宅のリフォームとは違い収益アップにつながらなければ意味がありません。少ない予算で効率的に入居率を上げて収益を増やすためには、費用対効果に着目してリフォームを行う必要があるでしょう。リフォームにはさまざまな選択肢があり、単に入居率アップを目指すだけであればどんなリフォームでもそれなりに効果はあるはずです。しかし予算には限りがありますので、リフォームごとの効果を個々に分析し、効果の高いものから優先して行うことが大切です。

☆効果的な外装リフォーム

リフォームは大きく分けると外装のリフォームと内装のリフォームに分けられます。外装リフォームを行うメリットは、入居希望者が物件を見たときの印象が良くなることです。外装をきれいにすることで、入居希望者が内覧したときの第一印象を改善できます。第一印象は入居を決める判断において重要な要素となりますので、効果的な外装リフォームをすることは大切です。特に費用対効果が高いのは、門・エントランスの改装です。門やエントランスは入居者が毎日のように利用する共用スペースで目にも入りやすいものですので、強い印象を残すことができる効果的なリフォームの成果が期待できるでしょう。

☆効果的な内装リフォーム

内装リフォームを行うメリットは2つ考えられます。1つは、最新の機能などをリフォームによって設置することによって物件の差別化を図ることができるようになることです。例えば、モニター付インターフォンは安全性をアピールできますし、インターネット接続環境の改善は利便性の高さをアピールでき、入居者の確保に役立つでしょう。もう1つは、すでに入居している人の満足度の向上に役立つことです。入居者の満足度向上は、長期的な入居者を増やす効果が期待できます。その結果、空室リスクを減少や入居者募集広告の宣伝費節約にもつながるでしょう。利便性と安全性のどちらに重点を置いてリフォームするかについては、主な入居者層などを参考にして決めることをおすすめします。

☆リフォーム代の計上には修繕費と資本的支出の2種類がある

リフォームを行った支出の分キャッシュは減少することになりますが、所得税の計算上、リフォーム支出は修繕費になる場合と資本的支出になる場合があります。それぞれ税務上の取り扱いが違い所得や税額への影響が変わってきますので注意が必要です。原則として、リフォーム後に物件の価値がアップせず元の状態に戻すための支出だと判断される場合は修繕費、リフォームによって物件の経済的な価値がアップすると判断される場合の支出は資本的支出として処理することになっています。その切り分けの判断が難しい場合は、税法上一定の計算方法が用意されており、その方法に従って修繕費と資本的支出を計算のうえで分割することになります。

☆修繕費で処理をする場合

賃貸アパート経営による所得は、所得税の計算上、不動産所得に該当します。不動産所得は、家賃収入などの総収入金額から管理委託料や修繕費、減価償却費などの必要経費を引いて求めます。修繕費はアパートの価値をアップさせるための支出ではありませんので、修繕支出を建物資産に計上して減価償却費計算を通して経費化する必要はなく、全額必要経費として処理することができます。全額必要経費にすることによって、支出した額と同額を不動産所得から減少させることができますので、キャッシュフローと所得が一致することになり、税負担の増加などで悩む必要がなくなります。明確に区分できない場合は、税法上定められている形式基準によって修繕費と資本的支出を分けることもあります。

☆資本的支出で処理をする場合

修繕費が全額必要経費として処理できるのに対し、資本的支出になる場合はいったん資産計上をして、耐用年数に従って減価償却計算を行う処理を行います。減価償却費を計上することによって、資本的支出の金額を耐用年数に分割して経費化していくことになります。資本的支出は、アパートの経済的な価値をアップさせることに貢献した支出ですので、将来にわたってその効果が発生します。そのため、修繕費のように支払った年の必要経費とすることができないのです。何のためにリフォーム支出をしたかによって、資産計上される勘定科目や耐用年数は変わってくる可能性がありますので、判断がつかない場合は税理士などの専門家に相談をした方がよいでしょう。

☆リフォーム代はどれぐらい積み立てておくべきだと思いますか?」のアンケート

「リフォーム代はどれぐらい積み立てておくべきだと思いますか?」というアンケートによると、101万円から500万円が50%と半分を占め、続いて100万円以下が20%、501万円から1,000万円以下が17%、1,001万円以上が13%という結果になりました。リフォームのための積立金額は500万円以下でよいと考えている人が70%にのぼっていることがアンケート結果からわかります。一方で、13%と少数派ですが1,000万円を超えるリフォーム積み立てが必要だと考えている人もいて、アパートオーナーによってどの程度リフォーム代を積み立てておくべきかについては考え方に差があることがみてとれます。

☆リフォーム代は積み立てで用意する

リフォームをするための資金は多額になるケースもありますので、短期的に捻出することは難しいでしょう。特にリフォーム代に占める修繕費部分については、物件価値を高めるものではなく現状の価値を維持するために使われる支出ということになります。つまり、経常的に回収している家賃収入でカバーすべき性質の支出といえます。そのため、回収した家賃のうち一定の割合を長期的に積み立てしておくことが必要になるでしょう。税法上、修繕費と資本的支出の区分が不明の場合は総額の30%相当額を修繕費として取り扱うなど規定もありますので、リフォーム代全体の30%程度を修繕費として積み立てることを目安にするとよいでしょう。