先行き不安な世の中、アパート経営で安定した収入を目指すのもひとつの手段です。

しかし、収入が増えれば、それだけ多額の税金を納めなければなりません。

それをなるべく低く抑えるために有効なのが、アパート経営の法人化です。

具体的にどのようなメリットがあるかを見てみましょう。

☆個人より法人化をした方がお得なラインとは

個人経営より法人化した方が税制上のメリットを得られるのは、所得税が累進課税だからです。

儲けが大きくなれば、所得税が法人税の税率を上回るので、

法人の方が納付する税金は少なくてすみます。

しかし、逆に言えば、利益が少ない場合は法人化した方が払うべき税金は高くなってしまいます。

たとえ、家賃による年収が何千万円あったとしても経費がたくさん掛かって赤字というのであれば法人化の恩恵は受けられません。

それではどのくらい利益があれば法人化した方がよいのかというと、

そのラインは課税所得900万円です。

課税の対象となる金額が900万円以上になれば、所得税と法人税の税率が逆転します。

ただ、ここで気をつけなければならないのは、

サラリーマンが副業でアパート経営をする場合です。

給与に家賃をプラスして所得課税が算出されるので、少ない利益でも累進課税による税率アップに直結してしまいます。

したがって、

サラリーマンの給与だけで年収1000万円近くあるというのであれば、家賃収入が低くても黒字である限りは法人化した方がお得だということになります。

☆法人化で節税効果

税率の他にも、法人化はさまざまな節税効果をもたらします。

例えば、従業員の給与に対する控除です。

家族を従業員として雇い、給与を払えばそれを必要経費として計上できます。

また、知人が仕事を手伝ってくれた場合にもアルバイト代として経費に上乗せができるのです。

さらに、会社で加入する役員の保険も経費と扱いです。

経費面以外では、年間の損失が繰越できるのも大きなメリットです。

個人の場合は、その年の利益と過去の赤字の相殺は3年までですが、

法人化するとそれが9年になります。ただしその場合は、確定申告は青色申告で行わなければなりません。

☆法人化で相続税も抑えられる

現在の節税効果だけでなく、将来を見据えた場合にも法人化には有利な点が存在します。個人経営の場合、経営者が亡くなると経営しているアパートに相続税がかかってきます

しかし、法人の場合、不動産は相続税の対象にならないのです。

また、不動産所得も役員報酬という形で生前に家族へ渡しておけば、相続税を支払う必要が生じた際の対策にもなります。

他にもアパート経営を複数の人間が相続する場合、

法人化しておけば不動産そのものではなくて、事業の株式を相続するため、分割相続が容易になるという利点があります。

☆法人化で起こるデメリットとは

もちろん、法人化にもデメリットはあります。

まず、赤字の場合でも法人住民税を払う義務が生じてきます。

また、法人名義にする時点で不動産所得税を払わなくてはなりません。

さらに、法人の確定申告は個人のものより遥かに煩雑です。

税理士を雇わなければならなくなり、顧問料の支払いも必要になります。

このように、法人化すると余計なお金がかかります。したがって、トータルで計算して個人と法人のどちらがプラスになるかの見極めが大切です。

お金の面以外のデメリットとしては、税務調査に入られる点が挙げられます。

調査自体は、やましいことがなければ別に問題はありません。

しかし、副業としてアパート経営を行っているサラリーマンの場合は、

平日に調査の立ち合いをしてくれと言われるのでスケジュール調整が大変な場合があります。

☆法人化するために必要なこと

法人でアパート経営を行うには、まず株主(出資者)と代表を決めます。

それから、役員も家族の中から選出した方がよいでしょう。

株主と代表は兼任するのが普通ですが、

副業でアパート経営を行う場合、会社が兼業を禁じている場合があります。

その時は、配偶者や息子などに代表になってもらうことになります。

もし、

個人でのアパート経営から法人経営に移行する場合は、

手続きが複雑になるので税務士に相談しましょう。

法人を設立してから新しい不動産を購入する場合は、

融資を受けられるか金融機関に打診する必要があります。

いずれにしても、実行に移す前に具体的な計画を立て、それに基づいてシミュレーションを行った上で、メリットとデメリットを明確にすることが大切です。