不動産投資を成功させるには、確実にキャッシュフローを生み出してくれる物件を選択することが大切です。キャッシュは基本的には利益から生まれます。そのため、十分なキャッシュフローや利益が得られるかどうかを投資する前に判断する必要があります。また、十分な利益を得るためには家賃の確保も重要ですが、どの程度経費がかかるのかについても検討する必要があるでしょう。そこで、投資判断に役立つ各種の指標やキャッシュフローの計算方法、そして利益率に影響を与える経費率についてお伝えします。
☆投資する物件を選ぶときに見る指標とは
賃貸アパート経営などの不動産投資を行う場合は、取得した不動産を売却して売却益を狙う場合もありますが、
一般的には、安定した家賃収入を得て、そこから生まれる利益を獲得することを目的としている場合が多いです。そのため、投資する物件が確実に利益を生むかどうかが物件選択のポイントになります。物件選択を行う場合には、いくつかの指標を参考にして判断することになります。そこで、代表的な指標を4つご紹介します。
1つ目は表面利回りです。
表面利回りとは、年間家賃収入を総投資額で割ったものです。言い換えると、投資額に対して年率何%の家賃を生み出すかという指標です。経費などを考慮して物件が稼ぐ利益を計算する必要はありませんので、簡単に計算できる点が特徴です。数多くの投資候補物件からいくつかの物件に絞る場合などに活用するとよいでしょう。
2つ目はNOIです。ネット利回りとも呼ばれます。
こちらは、年間家賃収入から経費を引いた利益を総投資額で割って算出します。投資によって得られるキャッシュフローの大きさを判断できますので、最終的な物件選択を行う場合には必ず確認する必要がある重要な指標といえます。
また、投下資本収益率と呼ばれるROIも参考になる3つ目の指標です。
ROIは、年間家賃収入から経費を引いてさらに減価償却費を引いたものを総投資額で割ったものです。投資によって得られる利益率を意味しますので、この指標も投資判断する上で確認すべきものです。
4つ目は、ROAです。
ROAは総資産利益率と呼ばれ、年間家賃収入から経費を引いたものを物件総額で割ります。物件の稼ぐ力といえるでしょう。金融資産投資など別の投資との比較をする場合に有効な指標です。投資物件を選ぶ際には、これらの指標と立地、需要などを総合的に判断して投資物件を選択することが大切になるでしょう。
☆税引き前キャッシュフローを計算する方法とは
不動産投資を行う場合は、長期的に投資した資金を回収する必要がありますので、投資を継続することがポイントになります。不動産投資を継続していくためには、資金がショートしないように経営を行っていく必要があり、キャッシュフローの管理が重要になります。そのためには、税引き前キャッシュフローを計算する方法を知っておくとよいでしょう。
税引き前キャッシュフローを計算するためには、まず入ってくる資金と出ていく資金をしっかり把握する必要があります。入ってくる資金としては、家賃収入や礼金そして敷金が考えられます。出ていく資金は、管理会社に支払う委託管理料や修繕費などの経費と敷金の返還などです。これらの資金が把握できたら、入ってくる資金から出ていく資金を差し引いて残額を計算します。税引き前キャッシュフローを計算するためには、ここから借入金の返済資金も差し引く必要があります。
借入金の返済資金は、所得税の不動産所得の計算上、必要経費に該当しませんが、キャッシュフローを計算する上では当然考慮しなければいけないでしょう。また不動産所得の計算上は減価償却費の計上が認められていますが、減価償却費は資金流出を伴いませんので、キャッシュフローの計算上は加味する必要はありません。
税引き前キャッシュフローは、賃貸経営によってどの程度の資金を生み出すことができるのかを判断する重要な指標となります。また、税金は現金で納付する必要がありますので、最終的な資金繰りを行う場合は、税引き後キャッシュフローも計算しておく必要があるでしょう。納税額を計算するためには、減価償却費まで考慮した不動産所得を把握しておく必要があります。
☆経費率を計算する方法とは
投資物件がどの程度の利益を稼ぐのかという点は、投資を判断する上で重要なポイントです。そして、投資判断をする場合に利用する指標で利益を見る場合には、家賃収入だけでなく経費率をどの程度で見るかについても大切になります。経費率とは、家賃収入に対する経費の率のことです。経費率は、年間経費の合計額を年間家賃収入で割って求めます。家賃収入の把握は難しくないでしょうから、経費側をしっかり把握することがポイントとなるでしょう。減価償却費は資金流出を伴わないものですので、それ以外の経費を把握することになります。
代表的な経費は8つあります。
1つ目は賃貸管理費です。
賃貸物件の管理は一般的には不動産管理会社に委託します。その委託管理料のことです。地域や家賃相場によっても違いますが、3%から5%程度かかるといわれています。
2つ目は建物管理費です。
エレベーターや電気設備などは法定点検が必要で、その点検にかかる費用です。
3つ目は水道光熱費です。
4つ目は保険料です。
賃貸物件にかかわる保険料としては、火災保険や地震保険などがあります。
5つ目は公租公課です。
固定資産税や都市計画税は、不動産を所有している場合、毎年課税される税金ですので考慮する必要があります。
6つ目は修繕費です。
小規模なものから計画的に行う大規模なものまで含めて見積もっておく必要があるでしょう。
7つ目は原状回復費用です。
敷金の範囲で収まれば問題ありませんが、経年変化部分の原状回復費用は敷金では賄えませんので、計算上含める必要があるでしょう。
8つ目は募集経費です。
空室期間をできる限り短縮するため募集広告を出す場合は支出が伴いますので、考慮しておく必要があります。
☆目安の経費率とは?
不動産投資物件を選ぶ際に利用するさまざまな指標を計算するためには、家賃収入と経費を見積もる必要があります。家賃収入は現状の家賃情報などがありますので、比較的計算しやすいでしょう。問題は経費率をどの程度でみるかです。大まかな目安として25%といわれることがありますが、鵜呑みにしないように注意する必要があります。
経費率は、家賃収入に対する経費の率ですので、同じような建物であっても、家賃収入が違えば状況は変わってきます。例えば、同じ構造と規模のアパートがある場合、建物管理費や保険料はどの地域で投資をしてもそれほど大きく変わることはありません。
一方、家賃収入は都心の物件か地方の物件かによって大きく変わります。
同じ額の経費がかかる場合、都心にある物件の家賃収入のように賃貸収入水準が高ければ経費率は低くなりますし、地方にある家賃収入が低い物件の場合、経費率は高くなる傾向にあります。そのため、一般的な目安とされる経費率だけでなく、物件個々の経費率をできるだけ高い精度で見積もるように心がけることが大切でしょう。
また、物件の築年数によっても経費率は変化します。一般的には、物件が古くなればなるほど修繕費は上昇する傾向があります。都心に賃貸物件を所有するJリートのデータなどを見ると、築年数が1年経過するごとに約0.6%程度経費率が上昇する傾向がみられます。築年数も考慮して経費率を計算していく必要があるでしょう。
【記事筆者】
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