不動産投資をする際、経費を正確に計上することで税金を安く抑えられることがあります。収入として自分の手元に入ってきたお金から所得を計算する際、経費を控除することができるからです。経費として計上できるものはいろいろあり、正確にすべてを把握しているという人はあまり多くないのではないでしょうか。無駄を省き、効果的な投資を行うためにも、経費について知っておきましょう。

☆税務上で決まっているルールとは

不動産収入がある人の場合、税額は確定申告によって決定します。確定申告の手続きは煩雑でただでさえ大変ですが、経費の計算をするときには「どこまで経費として計上できるのか」という問題に頭を悩ませる人も少なくないでしょう。実は経費については、税務上のルールでは「不動産収入を得るために支出した金額」としか定められておりません。不動産を第3者に貸し出し、家賃収入を得るという目的のために発生した経費ならばあらゆるものが経費となりえるのです。そのため「これは無理だろう」と思っていた意外なものでも、実は経費として認められる、ということもあります。大事なことはその目的が不動産投資にまつわることがどうか、という点です。税務署に聞かれたときにしっかりと合理的な説明ができ、かつ税務署の担当者が納得する内容であれば、経費として様々なものが計上できます。

☆不動産経営において計上が認められている経費

では、不動産を経営するにあたって一般に認められている経費についてまずは確認しておきましょう。

(1)各種税金
不動産を購入する際の不動産取得税、保有することによって課される固定資産税、そして購入の際の印紙税など、不動産を経営する上でかかる税金は必要経費として計上することが可能です。
(2)損害保険料
投資用不動産のために加入した火災保険、地震保険も経費になります。ただし保険料を前払いしたとしても、計上できるのは1年につき1年分だけです。
(3)減価償却費
減価償却費とは、不動産の取得にかかった費用を一括でその年の経費として計上するのではなく、耐用年数に応じて配分し毎年経費を計上するものです。2年目以降は実際の支払いはありませんが、それでも経費として計上することが認められています。
(4)修繕費
入居者が退去した後の建物の修繕にかかった費用も経費になります。しかしその修繕が原状回復を目的としたものではなく、改装や改造など資産価値を高めるためのものであった場合には「資本的支出」となり、経費計上はできません。
(5)住宅ローン借入利息分
投資用不動産の購入のために住宅ローンを組んだ場合、返済額のうちの利息分は必要経費として計上できます。ただし、賃貸として物件を貸し出す前の利息分は経費にはあたりませんので注意が必要です。
(6)管理費
実際に不動産を管理する管理会社や、入居者の募集をしてくれる賃貸会社への支払いも必要経費となります。
(7)税理士に支払う費用
毎年の確定申告は自分でもできますが、中には面倒な手続きはすべて税理士任せ、という人もいるでしょう。このときにかかる費用も経費として計上できます。
(8)その他必要経費(交通費、通信費、新聞図書費、接待交際費)
他にも不動産のために使った経費であれば、交通費や通信費なども経費計上が可能です。非常に幅広く計上できるため、この部分で頭を悩ませる人は多いのではないでしょうか。

☆例えばどんなものがある?

「その他」の経費について具体例を挙げると、管理会社と連絡を取った際にかかった電話代や郵便代金、あるいは物件探しに使ったインターネット代なども通信費として経費計上が可能です。携帯電話を1台しか保有していない場合には、プライベートでかかった通信費との区別が難しいので全額計上はなかなか困難でしょう。面倒な計算を避けるためには、投資用の通信媒体を持っていた方がベターかもしれません。あるいは不動産経営のために必要な知識を得ようと買った書籍や、不動産にまつわる景気の動向などを探るために取っている新聞も、新聞図書費として経費計上が可能です。また不動産投資セミナーに参加するための交通費や物件を見に行くための交通費なども計上できますので、「経費」の幅はかなり広いことがわかるでしょう。

☆車の場合はどうすべきか

交通費に関連して、自動車での移動についても経費計上はできます。不動産投資のためであれば、ガソリン代や駐車場代、高速代、自動車税も経費になるのです。あるいは自動車を購入する費用も経費として認められることもあります。ただし、明らかに経費と認められないような車、例えば過剰なデコレーションが施された車やチューンアップをしてあるような車では単なる「趣味の車」と受け止められ、申告しても経費扱いとみなされないことがあります。認められるのはあくまで不動産経営に必要なものだけであり、明らかにその目的を逸脱したものに関しては経費計上ができません。また、同じ車をプライベートでも使用している場合にはその分との差し引きが必要になります。例えばサラリーマン大家が本業での通勤に使っている、という場合には使用距離数などを勘案して按分しなければなりません。これはガソリン代や高速代などを計算するときにも当てはまります。

☆税務調査に備えるために領収書は重要

このように、経費として申請できるものは多岐にわたります。そのためきちんと把握して経費として計上すれば、節税効果が期待できます。しかしその際にはエビデンスとなるものが必要です。つまり経費に計上した金額を証明する書類で、代表的なものとしては領収書があります。税務調査のときには必ずエビデンスが求められますので、しっかり整理しておきましょう。
その際、ガソリン代や飲食代などの経費として認められるかが曖昧な費目に関してはメモを取っておくことが重要です。「○月○日管理会社訪問のガソリン代」、「○月○日税理士と打合せ食事代」など、もし調査官に聞かれても自分が説明できるようにしておけば、経費として認められる可能性が上がります。またこういったエビデンス類は保管期間が定められており、法人は7年、個人は確定申告を青色・白色のどちらでやるかによって変わります。不動産所得がある場合は青色ですので、保管期間は法人と同じく7年です。仮に何年か経って税務調査が入ったときにエビデンスを提示できない場合、その経費が否認されてその年の所得額が変わることもあります。額が大きくなれば所得税率も変わって追加納税を求められることもありますから、保管はしっかりしておきましょう。

☆領収書がない場合

実はエビデンスのための書類は必ずしも領収書である必要はありません。日付と金額、そしてそのお金が何に使われたかがわかればいいので、レシートでも十分役目を果たします。他にも請求書や納品書、銀行の振込明細などもエビデンスとして提出することができるでしょう。またネットショッピングなどレシートが出ない場合には取引画面をプリントアウトしておくことだけでも対策になります。もしレシートや領収書などが発行されない支払いの場合は、自分でエビデンス書類を作成することも可能です。エクセルで表にまとめておいたり、出金伝票を切ったり、その方法に「コレ!」という決まりはありませんので、自分なりの方法を探してみてください。ただし、領収書やレシートなどの第三者が作成した書類に比べるとその信憑度は下がります。エビデンスとしての優先順位も低いので、可能な限り領収書類はとっておきましょう。

☆税務調査の流れとは?

税務調査と聞くと何となく「怖い」「嫌だ」といったネガティブなイメージを持っている人も少なくないでしょう。しかし税務調査の目的はあくまで指導であり、税金の申告が間違っていたからといって即刻逮捕、というようなことはよほど悪質なケースでない限りありません。税務調査のイメージを払拭し、過度な恐れを取り除くためにも、その流れを知っておきましょう。
まず税務調査は、始まる前に事前通知があります。事前通知がない場合もありますが、それは通知をすると違法または不当な行為によって正確な税額把握を妨げるおそれがある場合のみですので、突然の“ガサ入れ”を心配する必要はほとんどないでしょう。通知があったら、必要書類を準備して当日を迎えます。当日はその書類のチェックやインタビュー、投資にまつわる質問などが行われます。世間話も挟みますが、それらもすべて調査の一環であり、判断材料の1つになります。そして調査後、特に指摘事項がない場合にはその旨の書面を受け取り調査修了です。仮に指摘事項があった場合には「修正申告書」を提出することになります。基本的には「聞かれたことに答えるだけ」ですので、やましいことがない場合には変に構える必要はないでしょう。