長年順調に不動産投資を行って物件数が増えてくると、収入が増えることによって所得税の支払いが増えてきます。所得税が増えるということはそれだけ、所得が増えているので本来はおめでたいことなのですが、あんまりいい気持もしませんよね?
そこで、節税目的で法人化をするという選択肢があります。しかし、どうやって法人を設立すればよいのでしょうか?この記事では、法人を設立する流れについて記述します。

☆ 会社の種類とは

現在、設立できる法人は「株式会社」、「合名会社」、「合資会社」、「合同会社」の4種類です。2006年5月までは出資金300万円以上であれば、出資の公募をしない「有限会社」が設立可能でしたが、今では設立することはできません。
この中でおそらく一番よく知られているのは「株式会社」だと思われます。株式会社の特徴としては、もし会社が倒産したとしても出資した金額までの責任となる「有限責任」であることと、出資割合に応じて議決権を得ることができる点が挙げられます。
また、「合同会社」は「株式会社」と同様に「有限責任」ですが、決定権は出資割合に関係なく全員一致が原則になりますので、出資者が複数いる場合は上手くいかなくなるリスクがあります。メリットとしては、登録免許税や定款認証にかかる費用が株式会社と比べて安くすむ点や決算の広告がいらない点です。
「合名会社」や「合資会社」は普段生活している上ではあまり見かけませんが、それはどちらも会社が倒産した場合に「無限責任」を負わなければならない出資者が必要となっているからです。「合名会社」はすべての出資者が「無限責任」を負う法人の形態で、「合資会社」は「有限責任」と「無限責任」両方の出資者が混在している法人の形態です。これらの会社は資本金の縛りがなく、設立費用が安くなるといったメリットがあります。
不動産投資は高額な初期投資が必要で、ローンを組むことも多い投資ですので、会社設立を考えておられる方は「有限責任」である「株式会社」や「合同会社」の設立を検討した方が良いかもしれません。

☆ 設立までに必要なこと(設立までに必要な日数)

法人を設立するにあたっては様々な手続きが必要です。中には少々面倒くさい手続きもあるかもしれませんが、なんとか頑張りましょう。
法人を設立するためには、法務局へ登記をしなければなりません。登記申請をする時までに考えておかなければならないことは「社名」、「会社のルールである定款の内容」、「資本金の通帳を新規に開設するどうか」などがあります。また費用はかかりますが、司法書士や公認会計士といった専門家に登記申請の代理を頼むかどうかも検討しておきましょう。
設立までに必要な日数は、定款の内容や資本金の口座をどうするかなどの準備を全て事前にしておけば、登記申請に時間がかかるだけです。登記申請は申請した法務局の忙しさによって変わりますが、大体1週間程度で完了します。

☆ 社名、本店所在地、事業目的等を決める

それでは、ここからは具体的な登記申請までの流れを説明していきます。
まず、法人を設立する際に最も重要な社名を決める必要があります。同じ名前の会社を同じ住所内に登記することはできませんので、インターネットや法務局で事前に調べておきましょう。
本店所在地は自宅でも賃貸住宅でも可能ですが、変更する際には印紙代が必要となりますので、後々同じ市町村内に引っ越しをする可能性がある方は○○県○○市までの登記にしておいた方が良いかもしれません。
事業目的についても同様に、後から追加や変更すると費用がかかってしまいますので、設立後に行おうとしている事業があれば、可能な限り書いておきましょう。ただし、本業とあまりにもかけ離れた事業を記載していると、取引先に登記簿を見られた際に信用を失う恐れがありますので、注意してください。

☆ 印鑑の作成(代表者印、社印、銀行印)

法人の登記をする際には会社の実印を登録する必要があります。そのため、法人の印鑑は事前に作成しておかなければなりません。印鑑は重要な書類などに押印するもので、あまりにも簡単な印影だと書類を受け取った相手を不安にさせてしまう心配がありますので、好ましくありません。そのため作成する際は、代表者印、社印、銀行印の全てにおいて、できるだけしっかりとした印鑑業者に依頼するようにしましょう。

☆ 定款の作成

法人登記の手順のうち最も大事なものが定款の作成です。定款は会社における憲法のようなもので、一度作成したら修正や追加をしながら使い続けなくてはなりません。そのためできるだけ慎重に、よく考えて作成しましょう。
定款に絶対に記載しなくてはならないものは「社名(商号)」、「本店所在地」、「事業目的」、「出資金の額」、「発起人の住所氏名」、「発行可能株式総数」です。さらに、次の事項についても記載しておかなければ、登記できない場合がありますので通常は記載します。その記載事項とは「取締役会や監査役の氏名」、「株式譲渡承認機関」、「取締役の任期」です。
他にも、記載しなくても定款の認証は受けられますが「定時株主総会の招集時期や招集方法」や「営業年度」、「取締役や監査役の人数」なども記載しておくと良いかもしれません。

☆ 出資金の振込

出資金は以前、最低金額が定められていましたが、現在は1円でも設立することが可能です。しかし、設立時は登記の費用だけでも30万円程度必要ですし、会社の備品をそろえるのもお金がかかります。また、法人を設立してから収入が入るまでに時間がかかる場合もありますので、その収入自体がない期間も含めていくらあれば大丈夫かを考えて決めましょう。
資本金は多ければ会社の信用が上がりますし、資金繰りにも好影響を与えます。しかし資本金が1,000万円未満の法人は、設立時から2期の間における消費税の免税措置を受けることができます。また、法人住民税の額も1,000万円以上と比べて少なくなりますので、1,000万円を超えるかどうかを一つの目安として意識しておくとよいかもしれません。
出資金を入金したら、入金した通帳の表紙、裏表紙、入金の明細が載っているページをコピーし、払い込み証明書を作成しておきましょう。

☆ 就任承諾書の作成

就任承諾書は登記する際に法務局へ提出する書類の一つで、役員に就任したことを示す書類です。法人の仕組み上、役員は会社から任命を受けて就任しますので、承諾したことを証明するために書面で残す必要があります。
ただし、定款において設立時の代表取締役や取締役の選任や選定について記載があり、発起人と同じ人である場合は定款内に署名捺印がありますので、就任承諾書の作成は不要となっています。
就任承諾書を作成する必要がない場合は、登記申請書内の「設立時取締役及び設立時代表取締役の就任承諾書」という欄に「設立時取締役及び設立時代表取締役の就任承諾書は定款の記載を援用する」と記載しましょう。

☆ 登記申請

これまでに述べてきたことを準備してきたら、いよいよ登記申請書を作成して提出します。提出先は本店となる住所を管轄している法務局です。
登記の事由には払い込み証明書の作成日、課税標準金額には資本金の額、登録免許税(印紙代)には15万円か、資本金×0.7%の大きい方の金額をそれぞれ記載しましょう。また、登記申請を行った日付が会社の設立日となりますので、こだわりのある日付にしたい場合は気をつけてください。

☆ 税務署への届け出

登記の申請は先述したように、通常は一週間程度で終了します。しかし法人の設立に必要な手続きはもう少し残っています。まずは本店所在地を管轄している税務署へ届け出をしなければなりません。
届け出を行う必要がある主な書類は「法人設立届出書」、「青色申告の承認申請書」、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」、「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」の4つです。
注意しなければならないのは「法人設立届出書」が設立後2ヵ月以内、「青色申告の承認申請書」は設立後3ヵ月以内、もしくは最初の事業年度末日までという提出期限が決められている点です。
設立後に届け出を行わなければならない事業所には他にも、都道府県庁や市町村役場、労働基準監督署やハローワーク、年金事務所などたくさんあります。設立時はなにかと忙しくて大変だとは思いますが、せっかく設立した会社を無駄にしないためにも、登記完了後速やかに行うようにしましょう。