不動産投資を行う場合、特に資格を求められることはなく、誰でも賃貸アパート経営や賃貸マンション経営を行うことができます。しかし、賃貸不動産経営を行うためには、多くの知識が必要になります。例えば、建築基準法など不動産取引にかかわる法律知識が必要ですし、賃貸マンション経営を行うのであればマンション管理にかかわる知識も必要です。また、不動産への投資という切り口で考えると、利回りの考え方や賃貸収入・売却収入・相続などに関する税金の知識も求められます。そういったことは専門家の力を借りることで対処できますが、投資家自身がある程度の基礎知識がないと、専門家のアドバイスを理解することは難しいでしょう。そこで、不動産投資に必要な知識が得られる資格についてご紹介します。

☆不動産に関連した法律の知識の場合

不動産投資を行うためには、土地の売買や建物の売買・建設は欠かせない要素です。そのため、不動産取引にかかわる法令についての知識は重要です。アパートを建設する場合は、建築基準法や都市計画法などの知識が必要ですし、土地を取得した場合はその権利を第三者に対抗できるようにするために登記も必要です。また、不動産業者と売買取引や仲介取引を行うにあたっては、売買契約にかかわる知識も求められることになります。
そういった不動産取引全般にかかわる知識を効率的に得られる資格があります。それが宅地建物取引士の資格です。この資格がないと行ってはいけない独占業務はありますが、不動産業者ではない投資家にとって重要な点は、資格取得を通じて得られる不動産関連の知識です。この資格は、一般的には「宅建」「宅建資格」と略されることが多いです。
この資格の取得のための勉強は、投資用不動産や設備を見る目が養われることに役立ちます。例えば、法令を理解していることによって不利な物件を取得することが避けられますし、契約においても不利な契約を見極めることができるようになるでしょう。宅建資格は国家資格ですので簡単な試験とはいえませんが、弁護士試験や税理士試験などと違って、一定期間しっかり勉強すれば合格に手が届く資格です。
試験の概要ですが、まず受験資格に制限はありません。試験範囲は、「権利関係」、「法令上の制限」、「宅建業法」そして「税その他の分野」の4つの分野です。試験形式は選択式50問で、記述式ではありませんので取り組みやすい試験といえるでしょう。試験日は年1回で、例年10月の第3日曜日に行われます。試験合格のためには、一般的に250時間から350時間の勉強が必要だとされていますので、それなりに計画を立てて挑んだり、資格学校の助けを借りたりした方が効率的に勉強できるでしょう。合格への近道は徹底的に過去問を解くことが効果的だといわれていますので、勉強はそれなりに必要です。それでも、試験勉強で得た知識は、不動産投資を行う上で無駄にはならないはずです。

☆マンション管理について知識をつけたい場合

賃貸不動産経営にはさまざまな手法がありますが、その1つとして賃貸マンション経営があります。マンションは、区分所有法の定めによってマンション管理組合を置かなければいけないことになっています。また、長期的にマンションの価値を維持していくために、修繕計画を立て、必要な資金を積み立てていくことも重要になります。さらに、電気設備やエレベーターなどの共用設備について法令を守ってメンテナンスを行うことも大切です。マンション1棟全体のオーナーになって賃貸事業を行う場合は、こういった管理やマンション管理組合とのやりとりについては、不動産管理会社に任せるのが一般的です。また、マンション1室などの区分所有者になって賃貸を行う場合は、管理組合との関係が生じます。
これらに関する知識が効率的に得られる資格としてマンション管理士の資格があります。試験を受けるための受験資格が気になる人もいるでしょうが、マンション管理士試験の受験資格には制限はありません。試験日は年1回11月に行われています。試験の内容は4分野から構成されており、1つ目は「マンション管理に関する法令及び実務に関すること」、2つ目は「管理組合の運営の円滑化に関すること」、3つ目は「マンションの建物および付属施設の構造及び設備に関すること」、そして4つ目は「マンション管理の適正化の推進に関する法律に関すること」となっています。机上の知識だけにとどまらず、実務に役立つ知識が得られる点が特徴の試験です。試験の形式は4肢から1つの正解を選ぶ方式です。知識ゼロから試験合格までに必要な勉強時間は600時間とも700時間ともいわれていますが、宅建資格の勉強も行っている場合は、かなり短縮できるでしょう。マンション管理の実務が理解できる貴重な資格ですので、賃貸マンション経営を行う人は目指してみることをおすすめします。

☆資産運用に関連した知識をつけたい場合

賃貸不動産経営には投資や資産運用という面があります。賃貸アパートや賃貸マンションを市場に供給することによって、世の中の役に立つという大義名分は重要ですが、それは投資家自身がその役立ちから利益が得られることが前提で、慈善事業ではないはずです。そこで、資産運用に関連した知識をつけることも大切になってきます。
資産運用に関連した知識が得られる資格としては、証券外務員やファイナンシャルプランナーの資格などがありますが、証券外務員資格は、主に証券会社などの金融機関の社員や行員などが、金融商品を販売する立場で知っておくべき内容が中心となります。そのため、余裕があれば勉強するという位置づけでよいでしょう。資産運用に必要な知識をバランスよく吸収するためには、ファイナンシャルプランナー資格の取得をおすすめします。
ファイナンシャルプランナーは一般的にはFPと略します。FP資格には2つの体系がありますが、その中では2級FP技能士の取得を目標にするとよいでしょう。合格率は30%から40%程度ですので、しっかり勉強すれば合格できる試験です。また、試験は年3回実施されます。そのため、勉強のためのモチベーションも維持しやすいでしょう。
FP資格の試験は、6科目の試験範囲があります。「ライフプランニング」の科目では、ライフプランの立て方や社会保険についての知識が求められます。社会保険は法人化した場合などにその知識を役立てることができます。また、不動産取得時に組むローンについての知識も得られます。「タックスプランニング」の科目では、家賃収入から生じる利益に対する税金や、不動産の取得・保有・売却時にそれぞれかかる税金について学べます。不動産投資における資金繰りや節税を考える場合に外せない知識が得られるでしょう。また、「リスク管理」の科目では民間保険全般の知識が求められます。賃貸経営でも火災保険や地震保険は必要です。どんな保険商品がありそれぞれの特徴は何かについて知ることで賃貸経営に役立てられるでしょう。「金融資産運用」の科目は、株式投資から不動産投資まで幅広く投資について学べます。投資効率や資産の組み合わせによってリスクを減らす方法など、投資家として必要な知識が得られるでしょう。「不動産」の科目は宅地建物取引士の分野と内容が重複している部分が多いです。最後の「相続・事業承継」の科目では、相続や贈与に関する民法と税法知識を学べます。次世代に投資不動産を引き継ぐことを考えている場合に役立つ知識でしょう。